労働者が業務中に起こした事故を個人的に賠償した場合、企業も負担する必要があるか?
労働者の過失で起こった事故の責任分担について、最高裁が判断を行います。
民法第715条第1項では「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」としています。
この条文の解釈を巡り一審の大阪地裁と二審の大阪高裁で判断が分かれています。
大阪地裁では、企業の負担を認めています。
一方大阪高裁は、企業の負担を認めませんでした。
交通事故を起こした状況が分かりませんが、その原因、事情も勘案されるべきものだと思います。
故意に近い状態か?
重過失があるのか?
軽過失なのか?
例えば、過去20年無事故・無遅刻・無欠勤であった労働者が、たまたま老親の介護のため寝不足から集中力を欠いた事故ならばどうでしょう?
逆にアルコール依存症で業務中に飲酒してしまったことで起こした事故ではどうでしょう?
両極端な例ですが、背景が重要になります。
損害賠償について労働基準法第16条では次のように規定しています。
「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」
これは、損害額に関わらず一定の金額を定めることを禁止しているものです。労働契約締結時に、「事故を起こしたら10万円」と決めていることをいいます。
しかし、この規定は、現実に生じた損害について労働者に賠償請求することを禁止しているものではありません。
運輸業など事故が起こりやすい業界では注目の裁判になります。
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